発酵食ライブ「米で醸す」その3

ハッピー太郎

2018年04月26日 19:52

発酵食ライブ「米で醸す」(座・座のジキドウ その弐) その3 日本酒

よくある「酒と料理の会」「蔵元の会」では、テーマがぼんやりとし、酒と料理が全然合わないイベントが多々あります。
特に香りがプンプンするお酒をキンキンに冷やして料理と全く合わないイベント、地獄です。(健康にもよくありません)

そして私は酒単体で成立する美味しさにはあまり興味がないのです。
料理と合わせて真価を発揮する酒が楽しい。
そんな考えで、15年ほど、醸造業界に携わってきました。

小川酒店さんが提案し、関係者で試飲試食の綿密な打ち合わせをして、この日のお酒は選ばれました。
最後の最後まで、小川酒店さん、悩まれてましたね。

酒器。



小川酒店の明美さんは、本当に長い間、滋賀のお酒を応援し続け、地道な活動をたくさんの人を巻き込んで、繰り広げてるかたです。
柔らかい表現のブログはこちら「酒屋日記

小川酒店さんとの長いおつきあいで、お互いの考えがよくわかっているのですが、
ざっくり分けるとしたら、滋味を感じるお酒と、現代のスポーティなお酒とが存在していて、
滋味を感じるお酒の真価を提案したい、そのようなお気持ちがあったように思います。

日本酒トークを浜大津の小川酒店の明美さんと。時間が足りず、ほんの少しとなりましたが、、、、。
今回の日本酒のセレクトのテーマは、

○ ぼんやりとではなく、具体的に料理と合うお酒を選ぶ
○ 乳酸発酵のお酒と乳酸添加のお酒の両方の良さを提案する
○ 冷や(常温)とお燗、両方楽しめるお酒を選ぶ
○ 原酒と加水した酒の良さ両方を提案する
○ 私たちが心から美味しいと思うものを選ぶ
○ 滋賀県の酒にこだわる


選ばれたお酒(一升瓶)。右側の小さな4合瓶は、参加してくださったお蔵元様の差し入れです。


左から、

1、「北島」 渡船生酛純米 精米88% 生原酒 29BY
昔の酒米「渡船」をあまり磨かず用いて、乳酸発酵した生酛造りの意欲的な一本。
「北島」シリーズは、甘みに頼らないお酒で、お料理と合わせて活きます。
その中でもこのお酒はお米を磨かないことによる特徴的な香り、穀物感。比較的締めた麹と日本酒度を切らすことによるドライ感。
そして数字には現れない、生酛特有の懐の深さがあります。
チーズのようなコクや、アミノ酸の多い料理にぴったり合います。
28BYのお酒は、ハッピー太郎が鮒寿司を仕込む時に、手水として贅沢に使いました。

2、「ハッピー太郎のお酒」 純米吟醸 吟吹雪 原酒瓶燗火入 26BY
私が岡村本家に在籍していた時、初めて最初から最後まで担当したお酒(乳酸添加)。
麹は工芸品のように締めたものを多めに使用。泡あり6号酵母を使い、もろみでの高泡はあえて潰さず、その断熱性を尊重。
全く温度管理をする必要がありませんでした。
自然の中でキャンプした時感じるものとの調和が私にとっての「良い酒」の基準です。
谷川を吹き抜ける風の香りや土の香り、木々のざわめき、焚き火の音。その中で飲んで調和する酒。
口先の美味しさをイメージしておりません。旨みや酸っぱさが強いお料理と合わせてやると、化けます。
長い常温熟成により、加水しても伸びる(物足りなくない)お酒になりました。


3、「不老泉」 山廃純米吟醸 加水火入 26BY
乳酸発酵した酒母(山卸廃止酛・・・・生酛の摺り卸す工程を省いた酒母)で全国的にさきがけの地位にいる不老泉。
麹を深く作り込んだことによるアミノ酸たっぷりの太い旨味。酒を搾った後神経質な管理をあえてしないことによる独特の熟成感。
不老泉ならではの世界観は当然ながら、その中でも割水して火入れした酒で、スムーズな流れとキレを感じる一本。
ジビエなどの赤身の肉肉しさ、こってりした味噌味との相性が良いです。

4、「大治郎」 純米吟醸 山田錦 生原酒 27BY
乳酸添加のお酒。14号酵母という比較的華やかな香りがする酵母ですが、2年以上生で寝かせていて、
生ひねを通り越して、比較的まろやかな香りに変化。大治郎さんのお酒はスマートさ、わかりやすさ、綺麗さを併せ持ち、
酒米の王者山田錦ならではの品の良さで初心者にも楽しめる一方、丁寧に味を入れた魚や野菜に寄り添うマリアージュを見せます。



以上の酒を「発酵食」を使用したお料理と合わせて行きます。

続く。



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